鬼哭（おまけ）
ギィ、と音を開けて、宿屋の入り口を開けた。
西バファルの辺境の村、ラッタ村の宿は小さくても雰囲気は悪くない。
まだ宵の口の中は明かりがついていて、客が数名たむろしていた。
その中に、旧友であるジャンとミリアムの姿が見える。
俺は、そちらへ歩いていった。
二人は俺を認め、珍しく自分からこっちへ来ることに驚いた表情をした。
そしてジャンは、俺の顔を見てにっと笑った。
「いい顔だな。」
「えっと・・・、そうよね・・・。」
「・・・。」
ジャンの口調は、俺が何をしてきたのか分かっているように聞こえた。
ミリアム一人、戸惑った表情をしている。 今朝のこともあり、バツが悪いのだろう。
「グレイって、そういう顔するんだ・・・。」
先ほどまで遊んでいたらしいカードへ、目線を落としながら呟いた。
立ち上がりながら、ジャンが言ってきた。 いつもと変わらない調子で。
「たまには、飲むか？」
「・・・そうだな。」
そういって、ジャンと共に俺は歩き出した。
久々の気分だ、ガキの頃のような・・・。
・・・悪くないな。
宿を出て、酒場に向かおうとしたところで、ミリアムの声が響いた。
「ちょっと！ 何二人で納得してるのよ！ アタイも混ぜなさいよ！！」
多分、ミリアムもすぐに追いつくだろう。
久々の酒だ。
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